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里見公直 土木学会基調講演
「海洋温度差発電への挑戦」〜百年少年の勇気〜
平成17年11月9日(社)土木学会 建設用ロボット委員会 基調講演
代表取締役社長 里見 公直
2.日本の特性をいかした解決策
2.1 海のもつエネルギー包蔵力
石油代替エネルギーのうち、安全性や地球温暖化的視点から最も期待されているものは、太陽エネルギー起源の再生可能エネルギーであり、その中でも有力なものとして海洋エネルギーがあります。海洋エネルギーには波力エネルギー、潮流エネルギー、洋上風力エネルギー、海洋温度差エネルギーなどがありますが、これまでに公表されている資料から、日本の所管海域内でのこれら各種の海洋エネルギーの開発可能量(潜在的包蔵力)は電力換算(output)で次の通り推算されております。

     波力エネルギー   (沿岸)  : 3,000万kW
     潮流エネルギー   (沿岸)  : 少量(量よりも環境への影響が心配)
     洋上風力エネルギー(沿岸)  : 5,000万kW
     海洋温度差エネルギー     : 3億kW

このうち海洋温度差以外のエネルギーは沿岸部より沖合の一般海洋での包蔵力は試算されていませんので、これらを考慮すれば日本の主権的管轄権の及ぶ海域(EEZ:Exclusive Economic Zone・大陸棚を含む)の海洋エネルギーの総包蔵力は電力に換算して数億kWに達するものと推測されます。
これらの海洋エネルギーのうち、波力、洋上風力の沿岸分と、海洋温度差による発電は技術的に商用段階にあり、資金面の手当てができれば緊急対応が可能であります。
投資規模としては、2025年までに日本の全発電電力量(2004年現在約1兆kWh/年)の半分を海洋エネルギーで賄うと仮定すると、波力と風力は開発可能量の1/2、海洋温度差は同じく1/3を開発すれば可能であります(総計1.4億kW)。これに必要な資金量は海上施設(着底式、浮体式など)や輸送施設(海底ケーブルなど)を含め、20年間で約100兆円(年平均投資額約5兆円)と推算されます。この程度の投資は現在の財政規模の数%にすぎず、また現在までの日本の公共投資の額や、対GDP比率(年平均1%弱)からしても、政府ならびに国民に強い意志さえあれば十分に可能な規模と云えましょう。なお、この投資により、海洋温度差発電の副産物としまして、電力以外にも日量1億トンの淡水と年間数千万トンの水産資源の産出が可能となります。
ところで、地球の表面積の7割が海であることは周知のことでありますが、地球と人類の共存を目指そうとすれば海に大きく期待せざるを得ないことは明白であります。その海について、EEZの面積では日本は世界の6番目であり、海に関する技術力と経済力の点ではアメリカに並ぶ地位にあるといえます。ちなみに日本のEEZはその国土の12倍、約450万平方キロメートルであり、全世界のEEZの約5%、全海洋面積の1.2%を占めています。
このようにわが国は文字どおり海洋国家というべき立場であり、世界に先駆けて海の活用策について研究・調査を進め、具体的モデルを先行して実施に移すことは人類にとって有意義なことであり、日本の義務であるともいえましょう。また、実際にこのような海洋エネルギー技術の開発を進めていく上で、海洋土木技術を始めとする多くの土木技術分野の連携がますます重要な段階にきていることは皆さんの意見の一致するところであります。

2.2 海洋深層水の資源としての活用 〜循環性の再生可能な資源〜
 海洋深層水は人類にとって期待できる最後の資源とも称されています。ご存知のように、既にここ数年、海洋深層水の多方面での利用が進められおり、取水施設は国内16箇所(2004年12月現在)で設置され、その規模もますます大きくなる傾向にあります。
深層水に関する知見は、最近の海洋学の進歩によってもたらされたもので、海洋には海洋大循環と呼ばれる地球規模の海水の流れがあり、北部大西洋や南極海周辺で沈み込んだ大量の海水が海洋の深層を流れて1000年〜2000年以上の年月を経て、インド洋や北部太平洋で海洋表層へと浮上しているといわれています。このような極地周辺で生成される深層水の量は毎秒数千万トンといわれ、黒潮の流量に匹敵する莫大な量のものです。
 一般に深層水は水深200mより深いところにある海水を指し、海洋の平均水深は約3800mであることを考えると、海洋にある海水の95%が海洋深層水であることになり、生成も大量であるが現存量も無尽蔵に近いといえます。この深層水は低温、富栄養性、清浄、安定性という4つの特性を有し、これらは全て資源として利用することが可能といわれています。
 1970年代からの米国やわが国の深層水研究の成果によると、深層水はその栄養塩の豊富さと清浄性から、水産動植物の増養殖に利用できることが明らかとなっています。またその低温性と清浄性から、水揚げした水産物の鮮度保持に効果的でありますが、これら水産関連以外に飲料水、酒類などの飲料の原料や塩、食品類、医薬品、化粧品の原料としても有用であるといわれています。特に大きく期待される分野としては、先に述べた水産資源の増産による食糧問題への寄与であり、もう一つは次節で述べる化石燃料に替わる温度差エネルギーの利用でしょう。
このような状況を踏まえ、海の持つ価値、特に海洋深層水を利用する海洋温度差発電について、これまでの開発の経緯、現状、今後の見通しをみていくことにします。
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