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里見公直 土木学会基調講演
「海洋温度差発電への挑戦」〜百年少年の勇気〜
平成17年11月9日(社)土木学会 建設用ロボット委員会 基調講演
代表取締役社長 里見 公直
3.海洋エネルギーの活用 〜再生可能なクリーンエネルギー〜
 3.1 海洋温度差発電(OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion)の歩み
化石燃料依存は早晩限界が来るといわれている中で、再生可能な海洋エネルギー等の自然エネルギー技術の実用化を進めることが必要であることは、大方の意見の一致するところでしょう。そこで、期待されている海洋エネルギーでありますが、経済性、利用可能資源量の点からも最近特に注目されている技術の一つは海洋の温度差を利用したOTECであります。
 OTECとは名前のとおり、海洋表層部の温海水と深層部の冷海水との温度差エネルギーを利用して、海洋に蓄えられた熱エネルギーを電気エネルギーに変換するシステムです。
この変換の際、温度差が大きいほど電気エネルギーに変換する効率が上がることから、自然条件的に赤道を中心としたおよそ北緯40度から南緯40度の範囲内にある国において実現できる可能性が高く、それは約100カ国にのぼるといわれています。

図1.表層と水深800mの海水温度差
図1

海洋温度差発電の小史
1881年ダルゾンバール(フランス)、海洋温度差発電を考案
1926年クロード(フランス)、実用化に向けて研究を開始
1933年クロード1200kWの発電船を建設
1964年アンダーソン、海中発電所を提案(特許)
1970年新発電方式調査会(日本)、海洋温度差発電の調査
1973年佐賀大学で海洋温度差発電の実験開始
1974年サンシャイン計画(日本)で海洋温度差発電の研究開始
ERDA計画(アメリカ)で研究開始
第1回OTEC会議(アメリカ)
1977年佐賀大学で1kWの発電に成功
1979年Mini-OTEC(アメリカ)50kWの発電に成功
1980年佐賀大学、島根県沖で海上実験
1981年東電、東電設計、ナウル共和国で120kWの発電に成功
1982年九電、徳之島で50kWの発電に成功
1985年佐賀大学に75kWの発電プラント完成
1988年「海洋温度差発電研究会」が発足(日本の電力会社、エンジニアリング会社、建設会社など25社)
1989年富山湾で世界初の海上型深層水利用実験(科学技術庁が中心)
1990年IOA(International OTEC Association)を設立(台湾、アメリカ、日本)
1993年オープンサイクルを用いた実証サイクル(210kW)アメリカのハワイ島のコナ海岸に完成
1994年佐賀大学の新サイクルプラント建設
1995年佐賀大学の新サイクルプラント実験開始(4.5kW)
1997年インド国立海洋技術研究所(NIOT)と佐賀大学がインドにおける1MWのOTEC実証プラントに関する技術提携を締結し、プラントの建設に着手
1999年伊万里で国際海洋温度差発電会議開催
2000年(株)ゼネシス、佐賀大学が保有するOTECに関する国有特許の専用実施権を取得
2001年NIOTのインド洋上1MW実証プラント完成、運転開始予定
2003年佐賀大学海洋エネルギー研究センター完成


 続いて、OTEC開発の小史を表1に示します。OTEC開発の歴史は意外に古く、今から120年以上前の1881年に、フランスの物理学者ダルソンバール(J. D’Arsonval)が考案したものが最初であり、これはくしくも世界で最初の火力発電所ができた年と同じ年のことでした。「夢のエネルギー」として注目されたダルソンバールのアイデアは、同じフランスの科学者クロードに引き継がれ、OTECの実用プラントの建設に執念を燃やしましたが、クロードはその実現を見ることなく、1960年にこの世を去ることとなります。
その後、1973年の第一次エネルギーショックをきっかけにして、OTECは石油の代替エネルギー候補として日本と米国で本格的な研究が行われるようになりました。サンシャイン計画の下、東電設計鰍ェナウル共和国に建設したOTEC(120kW、1981年完成)は、実際に海水で発電して現地の小学校に電気を灯したことで有名な話です。
 このように、OTECは実現可能な発電技術であることは実証されたものの、エネルギー変換効率が低く、海水の取水のために消費する電力を差し引くと、建設に多大な費用を要する割には所外へ供給できる電力が小さいという理由から、経済性の面から商業利用は難しいと一般的に考えられてきました。
その中で佐賀大学は、1973年にOTECの研究に着手してから30年以上にわたり、同大学の前学長である上原教授を中心に、これらの課題を解決すべく研究に取組んできました。この佐賀大学の研究グループは、これまでに11基の実験プラントを建設し、海洋温度差発電の商用化を実現するための技術的なバックグランドを確立しました。この間の積み重ねが多くの特許を生み、日本国内および外国の特許登録がなされています。
 ここで、過去30年間における海洋温度差発電技術の進歩を比較してみることにします。(図3)
 OTECは、熱源となる温海水と冷却源となる冷海水の小さな温度差を発電に利用するため、サイクル効率が低く、必要な温海水と冷海水の量が多すぎることが問題とされてきました。
 このOTECの経済性を評価する上で重要となる温・冷海水の必要量についてみた場合、1970年代のサンシャイン計画時の値を1とすると、現在の技術では約6割前後まで削減されています。これはOTECプラントで建設コストに占める割合の高い取水管が、大幅に小型化できるということであります。一方、サイクル効率についても、サンシャイン計画時に比べ約1.5倍と飛躍的に向上しましたが、これら技術的な進歩に大きく貢献したのが、佐賀大学の上原グループが開発したウエハラサイクルと呼ばれる高効率サイクルです。当社はいち早くこの佐賀大学の研究に参加し、実用化に向けた開発を行ってきました。そして2000年1月、佐賀大学が保有する国有特許の専 用実施権を取得、その後もOTEC用の熱交換器の開発を中心に実用化に向けた開発体制を強化しております。

図3.ここ30年間における海洋温度差発電の技術進歩
図3

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