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2000年10月11日
「遠望細見」インド洋でシビレたい 佐賀大など海洋温度差発電実証試験へ 上原教授「世界に電気を」批判を浴びても研究一徹30年」(読売新聞)
(記事一部抜粋) 「2000人分」の電力でるか インド西部の都市・ゴアから14日、一隻の鋼鉄船が出航する。全長七十メートル、全幅十六メートルの船が積んでいるのは、佐賀大学理工学部(佐賀市)の上原春男教授(60)のグループとインド国立海洋技術研究所が協力して作り上げた「海洋温度差発電」の実証プラント。表面と深海の水温差を利用して電気を起こす技術で、約二千人分の電力需要を賄う一千キロワットをインド洋で発電させようという世界初の施設だ。成功すれば実用化へ大きな一歩となり、熱帯、亜熱帯のアジア・太平洋諸国を中心に、世界の注目が集まっている。
海洋温度差発電の本格的な研究が世界で始まったのは、オイルショック後の1970年代から。
上原教授が考案した「ウエハラサイクル」は、熱効率の高さで世界の研究をリードしている。高性能のプレート式熱交換器を開発し、二基のタービンを使用する発電システム。船に載るタービンは幅1.5メートル四方、発電機は長さ1.5メートル、幅0.5メートル、高さ1メートル。
最近の研究では、五万−十万キロワット級の施設規模とした場合の発電に要する単価は一キロワット当り7.5円と試算された。原子力発電は5.9円、火力発電は10.2円で、低い単価での発電が可能と見られている。
「世界で最初のことをやるんだ、とインドの研究者や技術者も張り切っていました。海は無限の財産で、そこから大きな力を引き出すんですから」
同学部の池上康之・助教授(37)は一日から六日間、ゴアで発電プラントの施工状況を最終チェックした。国家プロジェクトにかかわっている現地技術者の使命感を肌で感じ、「これで世界が驚くぞ」と胸が弾んだという。
上原教授がエネルギー開発の道を選んだのは、長崎県・対馬で中学三年まで電気のない暮らしを体験したためだった。ろうそくの乏しい明かりで勉強したため、視力を極端に落とした。電気を知らない田舎者、と笑われた。「世界にエネルギーを供給できれば、多くの人が(エネルギー)争いで命を失わないですむ。まだ世界の半数は電気の恩恵を受けていない」
学会では、名のある研究者から、「水をくみ上げるポンプを動かすだけの発電力しかない」「そんな無駄な研究を国費でやるな」「ホラ吹き」と批判を浴び続けた。
それでも一人で三十年間、独創的な技術開発を進めてきた。佐賀という地方性が、有名大のしがらみに縛られずマイペースの研究を進められる背景にあった。今ではウエハラサイクル関連の特許は日、米、欧州で十二件を数えた。
プラント船は十四日に進水し、ゴア沖で海面下1キロの深層水をくみ上げるテストを行い、十二月十五日ごろ、インド南端の都市トゥーティコリンに移動。約三十五キロ沖でいかりを下ろし、本格発電へスイッチを入れる。
「エネルギー不足や環境問題が今世紀末に深刻化することは予見していた。だからクリーンな海洋温度差発電をテーマに選んだ」と上原教授。「温度差の高い南緯40度から北緯40度の地域は、どこも海洋温度差発電の適地。世界中で実用化を待ち望んでいるんです」とインド洋に感傷を向ける余裕はないようだ。
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