(記事一部抜粋)
先日佐賀へ飛んで素晴らしい人に会った。上原春男氏、六十歳である。佐賀大学で機械システム工学を教えている。経済成長について大著を物された(「とても高価です。一万円します」とのこと)が、むしろ「海洋温度差発電」の研究で知られている。
代替エネルギーは、二十年ほど前に聞いたところでは、まやかしの幻想でしかなかった。石油価格が、ちょうど最近のように天井知らずに値上がりしたころで、突然、人々は代替エネルギーに色めきたった。しかし、基本的には、太陽・風力・海洋の波を利用したエネルギーも、「小鳥を養う」程度のことしかできなかった。理由は簡単だ。継続性、安定性を欠き、頼りがいがなかったからだ。
上原氏とそのチームは三十年近くこのプロジェクトに取り組んでいるが、素晴らしいのは、安定して持続的なエネルギー源を提供できる点だ。
つまり、海底奥深くでは、世界中のどこでも深層水は摂氏約五度で安定している。一方、暑い国々では、海面の温海水は摂氏三十度以上になる。この温度差を利用してタービンを回転させ、次のように電気を発生させる。
まず、海底の冷海水をポンプと太いパイプを使って汲み上げる。この冷海水を使って媒体の蒸気(ここでいちばん好まれるのは圧縮アンモニアだが)を冷却・液化させる。媒体が液状になったらシステムのパイプに通し、最後に、海面の温海水を引いてきてこの液体を暖め、システム内で再び蒸気にして、タービンを回転させる。このようにしてサイクルが循環する。
この可能性について理論的には100年も前から科学者の間では知られていた。それに、日本的な入念なやり方で何十年もかけて改良し磨きをかけ、海洋温度差発電技術と呼ばれるようになり、ついに大規模なパイロットテストを行うまでにこぎつけた。来年1月中旬には、インド洋で1000キロワットのプラントを使用して開始される。すべて順調に行けば、次の段階では二万五〇〇〇キロワットに規模を拡大する。
何だって?そんなことができるのか?まだ確実なことは分からない。
確かなのは、すぐに名前が思い浮かぶ大企業−日立、東芝、三菱電機といった社名を耳にした−が、もう何年も前からこのプロジェクトをかぎつけ興味を示したものの、資金は提供しなかったということだ。数年前、神戸の小さなエンジニア設計企業・里見産業が特許権を買い取った。再び、すべてが順調に行けばの話だが、三〜四年で商業化される見込みだ。
上原さんは別れ際にとても喜ばしい一言を言った。「私は日本について超楽観的なんです。我々の小さな会社は素晴らしい。でも大企業はだめです。」
的を射ているではないか。私はそう思う。この一年半というもの自分で言ったり書いたりし続けている、その全く同じ結論に達した人物に出会った。
ブラボー、先生、同感です。



