(記事一部抜粋)
3月21日、ソニーの出井伸之前会長が佐賀大学を訪れた。ゼネシス(兵庫県明石市)というベンチャー企業と佐賀大学が共同で開発した海洋温度差発電という発電施設を視察するためだ。「21世紀は水の時代になる」と公言してはばからない出井前会長はこの技術に関心を示し、昨年ゼネシスの最高顧問に就任した。
海洋温度差発電とは、海の水深3〜5mの上層水と、800〜1000mの深層水との温度差を利用する発電システムのことだ。化石燃料を使わず、CO2(二酸化炭素)を排出しない自然エネルギーの1つと位置づけられている。
技術の概要は以下の通りだ。パイプの中に詰めた液体のアンモニアを一定の圧力を加えて、さらに約25度の上層水で温めると気化して膨張する。このアンモニアでタービンを回して発電。さらに、約5度の深層水で、アンモニアを冷やすと再び液体に戻る。このサイクルを繰り返して発電する。
その歴史は古く、基本的な原理は1881年に考案されていた。だが、発電できる量が少なく、発電施設として成立しないというのが定説になっていた。
その定説を覆したのが、佐賀大学の上原春男教授(現在NPO法人、海洋温度差発電推進機構理事長)だ。1970年代から海洋温度差発電の研究を始め、94年には熱効率を飛躍的に高めたシステムの開発に成功し、「ウエハラサイクル」と名づけた。
酒造装置の販売会社を営んでいた里見公直氏がこの技術に惚れ込み、事業化のために作った会社がゼネシスだ。
同社は2003年末に佐賀大学に30キロワットの発電能力を持つ実証プラントを建設した。昨年11月には、佐賀県伊万里市に生産工場を建設するなどして、商業化の準備を着々と進めつつある。
ただ、温度差を活用する発電設備は、海水を使うものより工場から出る100〜150度の廃熱を使うタイプの方が商業化は早そうだ。
発電後の余った熱エネルギーで温めた海水を蒸発させて、塩分や不純物を取り除く。さらに、プレート式の熱交換器を使って、効率よく水蒸気を冷やして淡水を作り出す。
原油高によって様々な電力コストが上昇しており、化石燃料を使わない海洋温度差発電のコスト競争力が高まりつつある。また、原油高で潤う一方で慢性的な水不足に悩む中東の企業が、自然エネルギーの1つとして海洋温度差発電を評価している。ゼネシスの實原専務は、「2007年から海洋温度差発電への関心が急速に高まった」と振り返る。



